初めてのアメリカ出張 ストーリー風味


 帰りのフライトは深夜一時なのだが、早めにサンフランシスコ空港に向かうことにした。行きと同じようにマークが送ってくれることになった。日が落ちてもまだ明るい、そんな時間帯に車はハイウェイをひた走る。運転席のマークと話しながら、けれども私の目は流れる景色を眺めていた。今回は初めてのアメリカだったから飽きることはなかった。知っているハイテク企業のオフィスが次々現れ、それら企業と自分とは接点がないのにも関わらずなぜか無性にわくわくした。何もないとしか形容しようのないだだっ広い空間があった。ボディに「sell」と大書してあるおんぼろ車が走っているのを見た時は、やっぱり本当にアメリカ人はそんなことするんだ、と自分の目で確認できてうれしかった。車は結構なスピードが出ていると感じたが、ちらりと見た表示盤の数字がマイル時だったのでどうでもよくなった。


 マークに会ったのはこの出張が初めてだった。しかもこんなふうに車の中でのみ話をする、その程度の係わり合いしかなかったせいか、時々話が途切れ私は気まずさを感じた。
 ふと私は思いついて、その日の昼食を話題にすることにした。というのも行ったのは中華、それも広東料理っぽい點心だったし、かつ話の相手、マークは香港出身・サンノゼ駐在だったので。あれは本当の広東なのかとか、中華野菜をこっちでも栽培しているのかとか、そんなやりとりをしていると、マークが問う。夕食はどうするのか、と。何か適当に空港で探して食べるつもりだったので、そう伝えると、一緒に食べようと誘ってくれた。ありがたい話に頷いていると、何料理がいい、中華か? と聞く。


 結局、彼のよく行く広東料理の店に連れて行ってもらうことになった。初めてのアメリカ出張、予想に反してアメリカンじゃない食事が多い。