ぞんびだ!1−2

 ぞんびださんがソファーに残したビニールの包装とアイスの棒ををかき集め、コンビニの袋に入れる。それを部屋の隅のゴミ箱に捨てた。振り返るとすぐそこにぞんびださんがいた。全く気配に気付かなかった。
「脅かさないでください」
「ねえ、お金」
 そう言ってぞんびださんが手を伸ばしてくる。こちらに手のひらを見せる。
「何のことでしょう?」
「私のこと、買ってくれるんでしょう?」
「いえ、買いませんって」
 僕はすぐさま否定した。
「高校生が小遣いをこつこつためて、娼婦を買う」
「だから、買いません。ていうか、勝手に「いい話」っぽくしないでください」
「そうなんだ……」
「そんな寂しそうな顔をしても、だめです」
「ところで、私、死体?」
「死体です」
 即答してしまった。ぞんびださん、傷ついただろうか、と様子をうかがうと、そんなことはなかった。こちらをみてにやにやしている。そこで僕は気付いた。
「『私したい?』と聞いたんですか」
 ぞんびださんは黙って頷く。
「『』は全く聞こえませんでした。そういう引っ掛けはやめてください」
「仕方ないなあ、じゃあちょっとだけ」
 言い終えると、ぞんびださんはソファーのところに戻りそこに屈み込んだ。下のほうから何かを引っ張り出した。
 バランスWiiボードだ。いつの間に買ったのだろう?
「食べた分、すぐに消化しないとね」
 ぞんびださんは楽しそうだ。でも果たして、ゾンビに健康が必要なのだろうか。


 その後しばらく、自称高級娼婦のぞんびださんとWii Fitをして遊んだ。僕たち二人はとっても健全だ。