『数学ガール』読了とそれに伴う募集について

 出張ついでに買いました、『数学ガール』。で、新幹線の中で読みました。大体の内容はwebで既読でしたが、一冊の本にまとまったことで交響曲へと昇華したような気がしました……ええと、音楽ど素人のくせに、知ったかぶった例えを使ったのですが、数学を音楽になぞらえるのって何かカッコよくないですか? 戯言でしたが、つまり、全体を貫く一つの流れというかメッセージというか、そういうものを感じたのです。以下は30代の男性の読後感です。


 高校生っていいよなあ、と思いました。主人公の『僕』が数学と真摯に戯れているのが無性にうらやましかったです。自分にも一応高校生の時代がありましたが、今思うと何だか無為に費やしてしまったような気がします。
 自分は学校で教わったことしか勉強しない生徒でした。それなりに理系に興味があり、結局そういう大学に行くことになるのですが、興味をどう扱っていいか分かっていなかったのだ……と今思います。あの当時はインターネットがありませんでした。私の親は大学に行っておらず、また金持ちでもありませんでした。通っている公立高校には偏差値で輪切りされた均一な生徒だけがいました。その中で何となく周りにあわせて、「普通」に振舞うことがいいような気がしていました。
 一方、『数学ガール』の『僕』の回りには同じ嗜好を持つ二人の女の子(!)と良問で導いてくれる数学教師がいます。その環境で『僕』は数学の世界に深く入っていくのです。「好きなことをする」という明確な意思をもちながら。


 結論として、こういうメッセージを含む本に出会える2007年の若者は幸せだろうな、としみじみ感じます。上に書いたような高校生活を、私は後悔しているわけではありません。ただ、この本を読むことができたならば少し広い考え方をするようになっていたかも、と思うのです。面白い、と感じたら学年を飛び越えて数学を楽しめばいいし、そもそも「普通」という枠を規定したり、自分をその枠に閉じ込めておく必要なんか全然なかったんです。


 残念ながら『数学ガール』は30代には直接的な効能はありませんでした。けれども、読後にこのように考えをめぐらせることができたのは収穫だったと思っています。加えて、しばらく避けがちにしている仕事上の小難しそうな理論を、まじめに取り組んでみようかと今考え始めたところです。
 そんなわけで、様々な視点を紹介してくれるミルカさんと、的確な質問で理解のチェックをしてくれるテトラちゃんを個人的に募集しています。一緒にPaperを読んでください、お願いします!