友人ハナのこと

 高校からの友達であるハナは、次々と違う男を彼にするので、久しぶりに会ったときにはまず過去にさかのぼって話をしなければならない。
「でもよくそんなに簡単に男ができるよね」
 履歴を一通り確認すると、私はいつもこう言う。
「だって何かあきちゃうんだもん、私、メグと違うんだ」


 ハナはさっぱりと答える。悪びれることもなくそう言い切る。そして私はハナの、まっすぐこちらに向けられている笑顔を見る。すると私は言葉を勘ぐることなしにそのまま受け止めてしまう。結局、人を引きつける魅力に富んでいる人はいるものなのだ。
 ハナに初めて出会ったころは、そういう無邪気な言動が一つ一つ気になった。男にあきちゃうなら、女友達は? こんな質問はさすがに口に出せず、知りたい気持ちを長いこと抑えていたが。でも何年か友達をやっていると、自信がついてきた。図々しくなったともいえる。
「メグは特別だよ」
 ハナの言葉にだまされ続けているせいかもしれない。
 ハナを観察するのはとても興味深い。例えば、同時に二人の男を彼にしていたことはないはずだ。それは考えるだけで面倒でめまいが出る、と前に語っていた。
 それから、ハナは彼にあわせて趣味も変えるのだった。


「で、今の彼とはなにをしてるの」
 お約束で尋ねると、ハナは口を閉じて微笑んだ。口の端がぴくっとしていて、聞いてくれと言わんばかりだ。
「知りたい?」
 ハナは言う。いや、だから話したいのはあなたでしょう。
「えっと」
 勿体ぶらなくていいから。
「あ、そういえばメグ、最近ダイキとはどうなの?」
 言うとハナは顔をちょっと動かし、表情がぱっと変わって、好奇心にあふれた目をこちらに向けた。こういうのが男のツボをつくのだろう……ていうか、今までさんざん自分のことを話しておいて、ここで私のことを聞くか。ダイキとは別れたばかりだ。


 「そっか、メグ、大変だったね。ダイキとは長かったもんね」
 ハナが慰めてくれた。正直に言うと最後の方は別れる予感でいっぱいだったので、ダイキの方からそれを切り出してくれたときには、つっかえていたものがすとんと落ちたような気分になったのだ。
 いやそれよりも、今はハナの新しい趣味が知りたい。