LSD

(5; 彩)大人になりたい

「走ろう会」の面々は自営業だとか自由業だとかをやっている。だから平日の昼間からこうやって宴会ができるのだ……と考えていると、高校生の自分がちょっと悲しくなってきた。今いる川原は暑くもなく寒くもない。皆が座っているビニールシートは青い。あと、…

(4; 元沢)一日がもっと長ければいいのに

一日がもっと長ければいいのに、と思う。例えば48時間、いや30時間でいい。そうすると6時間余計に使えることになるから、今の睡眠時間をそのまま陸上の練習に当てられる。それだけではなくて、予習や復習をしたりするのも悪くない。 何かどうも最近何事…

(3; はるか)信号が青になったらまた走り出そう

北山は弟そっくりだ、と思う。親が離婚してから滅多に弟に会うことはないけれど、彼と話している時に生じるこの感情は同じ種類のものだ。言いたいことがあるのに黙っている、そういう様子が手に取るようにわかる。そして私は、上から見下ろすようなものの言…

(2; はるか)何も考えずにひたすら走り続けよう

成績上位者を発表するのは、もう本当にやめにしてもらいたい。物理教師はテキパキと名前を呼び上げていたけれど、私の名前と点数だけはわざとゆっくりと読まれたような気がする。 「長曽我部さんは文系志望なのにすごいね」 次に移るまでの間、奴は無言だっ…

(1; 北山)とりあえず走り出してしまえばいいんじゃないだろうか

クラスの連中に少しつかまってしまったけれど、何とかかわして急いで部室へと向かった。今日は特別な日、LSDの日なのだ。ぐずぐずしていると置いていかれてしまう。 階段を小走りで降りるとき、ふと目をやった高い窓の向こうに秋の青空が見えた。晴れては…